PROJECT STORY:02サテライトヤード

PROLOGUE

2030年までに生産量を年間600万tに飛躍させる。
このビジョンを見た関係者のなかには、「本当にできるのか?」と思った者もいるだろう。
鉄鋼を生産するためには、それと同等量以上の原料も確保する必要がある。
もはや、常識にとどまってはいられない。
危機感とも、高揚感ともとれる空気が、業界の殻を破ろうとしていた。

メンバー紹介

T.I
購買部 購買課
サテライトヤード統括
1990年 入社

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T.S
購買部 購買課
2024年 中途入社

T.Sさん写真

挑んだのは、鉄鋼業界の非常識

当時、田原工場は壁にぶつかっていた。 生産量は順調に拡大していたものの、原料の鉄スクラップが不足していたのだ。 目標は月10万t以上。 しかし、工場に運びこまれる量は8万tにも満たない。 高値をつけるなどの対策も講じたが、田原工場は、巨大な鉄スクラップ発生地である名古屋市から遠く離れた場所にあり、納入回数で利益を生み出すサプライヤーの重い腰を上げることはできなかった。 もはや打つ手がない。 窮地に立たされた東京製鐵は、自ずと業界の「非常識」に着目することになる。 生産性・コストの観点から、工場内で原材料を集荷することは鉄鋼業界の常識中の常識。 しかし、東京製鐵は工場の敷地を飛び出し、出張拠点である「サテライトヤード」を開設することを決断。 当然、参考となるような事例も経験もない。 挑戦ではなく、無謀。業界に詳しい者であればあるほど、この決断が功を奏すとは考えもしなかったに違いない。

T.I当時、私は田原工場の資材課長を務めていました。 正直、本社から話を聞いたときは耳を疑いましたし、当初は工場内でも疑問を持つ方が多かったように思います。 この空気を変えたのは、若手社員たち。「なにもしなければ、なにも変わらない」「やれるだけやってみようじゃないか」そんな熱量が次第に工場全体を動かす力になっていったんです。

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想定外の成果を生んだ業界初の「サテライトヤード」

「サテライトヤード」をつくる。 言葉で言うのは簡単だが、事はそう単純ではない。 システムの改修もあれば人員の確保もある。 特にサプライヤーとの信頼関係づくりは、避けては通ることができない問題だった。 当然、名古屋のサプライヤーには、従前からの得意先との付き合いと信頼関係がある。 東京製鐵が進出するからと言って、素直に「はい。そうですか」と手放しで鉄スクラップを納入してくれるはずもない。 下手に新参者と付き合うことはリスク、と捉える向きもあったに違いない。 ただ一方で、サプライヤーにとっても販路が拡大することはビジネスメリットにつながる。 プロジェクトチームはサプライヤーに3回、4回と足を運んでは説明を重ね、地道に成功の道筋を手繰り寄せていった。 結果、業界初となるサテライトヤードは無事に稼働を開始。 想定の約2倍となる月1万t以上もの鉄スクラップを集荷するに至る。 この成功は田原工場の安定稼働を支える大きな力となった。

T.I「サテライトヤード」開設では、当社の風通しの良さも大きな追い風になりました。 設備関連でわからないことがあれば工場内の電気(電気設備)部隊が快く知恵を貸してくれましたし、現場の検収スタッフが足りないとなれば岡山工場が人員を派遣してくれたんです。 わからないこと、できないことがあれば助け合う。 これも当社の強みのひとつだと思います。

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日本最大級のスクラップ発生地、大阪へ。

名古屋での成功は、東京製鐵に確かな手応えをもたらした。 プロジェクトチームが次なる挑戦の場所として選んだのは、日本最大級の鉄スクラップ発生地である「大阪」。 だが、このエリアは東京製鐵にとって未開拓の地でもある。 工場が立地しないことから同社のブランドは一切通用しないうえ、多くの鉄鋼メーカー、サプライヤーが存在し、一社一社の特性がわかっていなければ商売が難しいエリアでもある。 そんな東京製鐵において渡りに船となったのは、長年、商社で鉄スクラップのトレードに携わっていたT.Sの加入だ。 その豊富な知見を最大限に活用し、プロジェクトチームは「購入価格表」を刷新。数ある競合メーカーの中から東京製鐵が選ばれるように緻密なプライシングを行っていった。 名古屋と同様、大阪でも想定を超える集荷量を記録しているが、T.Sの知見が加わったことで一段階上のサービスが提供できるようになったことは間違いない。 その証拠に、サプライヤーからの「この価格表、ようわかってる人が作ってますね」という評価が漏れ伝わってきていると言う。

T.S2024年に東京製鐵へ。 購入価格表の改訂では当社の文化やルールを落とし込みながら、他の鉄鋼メーカーが過小評価している品種があれば価格をわずかに上げ、サプライヤーが売り先に困っている品種があれば価格を明示するようにしていきました。 実際に目標の2倍の量の鉄スクラップが集まっていますし、わずか半年という期間で軌道に乗せられたことに大きな手ごたえを感じました。

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2050年のビジョン達成を見据えて

名古屋での成功、大阪での飛躍を経て、2025年に東京湾岸サテライトヤードをオープンさせた東京製鐵。 現在、「サテライトヤード」3拠点の総集荷量は工場分を超えており、会社全体の当面の集荷目標である400万tの達成もすでに目途が立っていると言う。 かつて「打つ手なし」だった状況は一変。 もはやこのプロジェクトを非常識と呼ぶ者もどこにもいない。 むしろ、鉄鋼業界に原材料確保の新たな手段をもたらしたことは大きく、今後、「サテライトヤード」がひとつのスタンダードとして確立される可能性もゼロではないだろう。 だが、プロジェクトチームにはここで満足しているような暇はない。 2030年には600万tという目標が、そしてその先には1,000万tという大目標が待ち構えている。 現状の400万tという数字だけを見ればそれこそ大きなハードルにも見えるが、T.IとT.Sなら笑って飛び越えてしまうような気がしてならない。

T.S次の目標は、600万t。 既存の「サテライトヤード」の拡充、第4、第5の拠点の開設はもちろんですが、それだけでは達成が難しいということもわかっています。 スクラップ評価の見直しによる新たな原料の発掘など、できることも数多い。 今後も可能性を閉じることなく、目標達成のためのアイデアを創出してければと考えています。

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求める人物像について

T.I現状維持を良しとしないのは、当社の昔からのDNA。 振り返ってみれば「あのとき挑戦していなければ大変なことになっていたな」と思うこともたくさんあります。 当社には「君はどう思う?」と社員の意見に耳を傾ける文化もありますし、「この会社でこんな仕事がしたい」「こんな挑戦をしたい」そんな思いがある方なら、当社を全力で楽しめると思います。

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T.S正直、誰にでも同調してしまうような人は求めていません。 全員が同じ考え方を持っていたら会社は成長できませんし、会社の求める目標を意識しながらも自分の考えを熱く語れる方と私は一緒に働きたい。 当社は頭ごなしに意見を否定する人はいませんし、ぜひあなたらしい視点、あなたらしいアイデアを東京製鐵にインプットしてください。

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KEYWORD

サテライトヤード
工場から離れた場所で、主原料を集荷・購入する拠点。 通常の「ヤード」は郊外にある工場内もしくは隣接する場所に設置されるが、「サテライトヤード」は東京や大阪、名古屋など、主要都市の港に開設され、鉄スクラップの一大発生地で直に主原料の集荷・購入を行う。
Tokyo Steel EcoVision2050
東京製鐵が掲げる長期環境ビジョン。 2050年までに「CO2排出量ゼロ」「生産量1,000万t」を達成する目標が設定され、基準年である2013年の生産高223万tを皮切りに、順次、300万t、600万t、1,000万tへと拡大していく計画が立てられている。
購入価格表
東京製鐵が工場への鉄スクラップ入荷状況や相場を分析して都度更新する、鉄スクラップの購入価格を明示したリスト。 工場別、鉄スクラップの品種別に明記されており、同社のホームページに公開される。 購入価格を広くオープンにしているのは同社購買の大きな特徴でもあり、その価格は国内のみならず、海外の業界関係者も注目する指標とされている。