PROJECT STORY:01ほぼゼロ

PROLOGUE

鉄鋼業界のCO2排出量は年間1.3億t。実に日本全体の約13%にも相当する。
2050年までに温室効果ガス排出量をゼロへ。
政府が掲げる目標を実現するためには、鉄鋼業界そのものが変化しなければならない。
国を支える鉄を、よりクリーンな鉄に。
時代が動いたそのとき、「ほぼゼロ」の芽がにわかに動き出す。

メンバー紹介

Y.A
総務部 総務課
2015年 入社

Y.Aさん写真

T.N
販売部 販売課
2017年 入社

T.Nさん写真

時代の要請から生まれた、業界初への挑戦

その会議のあと、Y.Aは時代が変わったことを痛感していた。 大手ゼネコンの大成建設から声がかかったのは2022年。 「先端技術の粋を集めた研究所を建設したい。 環境性能を最優先に、これまでにない水準を目指したい。 そこに使う低CO2鋼材を開発してくれないか」と相談を受け、上司とともに打ち合わせに臨むことになったのだ。 電炉メーカーとして世界有数の技術力、製品群を持つ東京製鐵への期待もあったのだろう。 電炉の製造プロセスにおけるCO2排出量はわずか0.4t。 だが先方の要求水準はそれをはるかに超えるものであった。 当時は日本国内のどこを見渡しても前例と呼べるものはなく、要望に応えることはそのまま業界初に挑戦することを意味した。 当時はまだ、低CO2鋼材の価値が十分に認知されているとは言えない状況だったからだ。
しかし今や、顧客は確実に低炭素建材を求めている。 帰り道、上司の「面白い。やろう」という一声がY.Aの背中を押した。

Y.A今回の決断にあたっては、自主独立の精神や業界のトップランナーとしての矜持、自由闊達な社風も大きく影響しています。 上司も「やっちゃおうよ」と即断即決。 高額な投資起案であっても、理にかなっていれば、その場で決裁されることもあり、こうした意思決定層との距離の近さも当社の強みになっていると思います。

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実証実験の成功、そしてほぼゼロは次のステージへ

東京製鐵の創業は1934年。 以来、電炉メーカーとして日本のCO2削減に貢献し続けてきた。 当然「ほぼゼロ」につながるコアアイデアがなかったわけではない。 電炉におけるCO2排出量の7割~8割は電力が占める。 これを再生可能エネルギーに変換できさえすれば、究極論、排出量をゼロに近づけることができる。 事実、1年間かけて行われた大成建設との実証実験は成功に終わり、プロジェクトは新製品として一般販売を目指す段階へと移行している。 だが、実験と市場では求められるものが違う。 経済合理性と社会的責任の追及。 「ほぼゼロ」の商品化を前に、プロジェクトチームは次の難問にぶつかっていた。

T.N開発段階からY.Aさんのチームは、販売のしやすさ、共感の生みやすさを追求してくれていました。 グローバルスタンダードに準拠しながらもシンプルな仕組みになっており、価格の見える化も相まってお客様の賛同も得られやすい。 このことはお客様が、さらにその先のお客様へと輪を広げていくための大きな原動力になっています。

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世間に胸を張れる、今できる最高の最適解を

東京製鐵としての最適解。そこにたどり着くために、チームは1年ほどの開発期間を要した。 Y.Aは再生可能エネルギーの種類や価格などのリサーチを行うかたわら、国際的な算定ルールに則ったうえで製品群すべてのCO2排出量を計算。 さらに世界中のありとあらゆる論文、ありとあらゆる主張を学んでは、国内外の環境保全団体やシンクタンク、認証機関、国際ルールに精通している専門家たちと議論していった。 数字上だけであれば「排出量ゼロ」も実現可能ではあったものの、プロジェクトチームはその道を潔しとせず、「デマンド・レスポンス」(上げDR)や非化石証書を活用して使用電力のみを再生可能エネルギーに変更する手法を選択。 その結果、どうしても製造工程で発生してしまう約0.1tのみがCO2排出量として残ることになった。 これが2024年7月に公表された「ほぼゼロ」の名前の由来である。

Y.Aマーケティング上、「排出量ゼロ」は非常に大きな意味を持ちます。 複雑な仕組みを利用すれば実現可能なことはわかっていましたが、「消えていないものがある、というファクトを、そのまま素直に謳うのが当社らしい」と判断しました。

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いつの日か、真のゼロを実現するために

2024年の発表以来、着々と売上を積み上げている「ほぼゼロ」。 国際的な算定ルールとの整合性、第三者機関による認証、そして競合優位性のある価格帯に、誰もが理解しやすいシンプルさ。 販売開始後、顧客からも「これなら安心して採用できる」「ほぼゼロを使っている証明書、見えるところに飾っているよ」といった嬉しい声が届き始めていると言う。 一定の成功を収めているように見える「ほぼゼロ」だが、プロジェクトチームの当事者たちからは未だに「完成」という二文字は聞こえてこない。 その歴史は始まったばかり、ということなのだろう。 長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision2050」のなかで、2050年までにCO2排出量ゼロ、販売総量1,000万tという野心的な目標を掲げる東京製鐵。 現状、数だけで言えば全体の1%にも満たないが、いつの日か「ほぼゼロ」が100%になったとき、この製品がビジョン実現の要になっていることは間違いないだろう。

T.N「ほぼゼロ」は未完成。それがY.Aと私の共通認識です。 プロジェクト全体としては今後、世界の変化に合わせて製品をブラッシュアップしていくことになりますし、近い将来、再生可能エネルギーの自社発電にも挑戦していく予定です。 その進化の意図を地道にお客様に広げ、新たな共感の輪を広げていくこと。 それが営業である私の、次の責務だと思っています。

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求める人物像について

Y.Aこの業界は変化が激しく、足をとめていると社会の流れについていけなくなる可能性があります。 受け身の姿勢では難しいかもしれません。 時代の変化をキャッチアップして「今、なにが求められているのか」を考えられる方、現状を完成形と捉えずに常に次の飛躍を考えられる方ならば、きっと、当社で思う存分、力を発揮できると思います。

Y.Aさん写真

T.N鉄鋼業界の営業職は、何度も何度も顧客に会い、何度も何度も言葉を交わし、信用と信頼を積み上げたうえでようやく「君に託したい」と言ってもらうことができる仕事です。 地道に、人との関係性を築いていく。 地道に、お客様の課題と向き合っていく。 そんなスタイルが好きなのであれば、すでに当社の営業としてのスタートラインには立っていると思います。

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KEYWORD

電炉
鉄鋼を生産する2大手法のひとつ。 「高炉」が鉄鉱石やコークスを原料とするのに対し、「電炉」は電気によって鉄スクラップを溶かして製品を生み出す。 クリーンな製法としても知られ、製造時のCO2排出量を高炉の5分の1にまで抑えることができる。
「ほぼゼロ」
東京製鐵の低CO2鋼材ブランド。 もともと電炉自体がエコな製法だが、「ほぼゼロ」の登場によってCO2排出量が従来の4分の1に減少。 化石燃料起因の0.1t分のみCO2を排出することになるが、高炉と比べると約20分の1の排出量となることが確認されている。
デマンド・レスポンス(上げDR)
工場周辺エリアにおける再生可能エネルギーの発電量が供給過多となりそうなタイミングで、電力会社からの要請に基づいて電気炉を稼動させ、逆に電力需要を創り出す仕組み。 天候等によって発電量が左右される再生可能エネルギーの増加により、電力の大規模需要家が持つ調整力に注目が集まっている。
非化石証書
日本政府が主体となって運営する、再生可能エネルギーなどの非化石電源の「環境価値」を証明したもの。 電力自体は区別できるものではないため、この非化石証書を購入することがクリーンエネルギーを使用していることを公に証明する手段のひとつとなっている。