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プロジェクトストーリーPROJECT STORY

※所属および記載内容はインタビュー当時のものです

PROJECT STORY 014CCM 新しい連続鋳造設備の導入をしました

メーカーである私たちにとって設備投資は会社を存続させ企業価値を増大させるうえで欠かすことのできないものです。私たち東京製鐵は2017年岡山工場において新しい連続鋳造設備の導入をしました。70億円規模の大型設備投資であるこのプロジェクトを中心人物の仁科、花澤より紹介します。

Q1このプロジェクトが発足したきっかけを教えてください。

花澤岡山工場にはもともと製鋼電気炉が2基あったのですが、2014年に私が岡山工場に転勤になった際に、最初に工場長から言い渡されたミッションが、いま2基稼動している電気炉のうち、生産効率のよいDC電気炉の溶鋼でブルームビレット(圧延してH形鋼や異形棒鋼になる前の半製品)を作れないか、製鋼工場を集約することでより効率的な生産体制を築きたい というものでした。このブルームビレットをつくるのに必要な設備が連続鋳造設備です。連続鋳造設備には電気炉から出た溶鋼を流し込む鋳型がついていて、この鋳型ごとに作ることのできるブルームビレットサイズが異なります。

仁科愛知県田原市の新しい工場の方にホットコイルの生産を集約したことを受けて、2015年4月からDC電気炉は停止していました。新たな連続鋳造設備を導入せずにDC電気炉を再稼動させるという話も出ていました。再稼動させるDC電気炉で作った溶鋼をAC電気炉の下工程に接続されている連続鋳造設備までもっていって使う案や、既存の設備にあるスラブ連続鋳造設備の鋳型を改造してブルームビレットをつくるといった案です。しかし、レイアウトを検討してみると停止中のDC電気炉に新しくブルームビレット連続鋳造設備を設置できることが分かりました。将来的なニーズの変化への対応や生産能力の向上、コスト競争力強化等も考え連続鋳造設備を新設する案を採用するに至りました。

花澤2014年夏頃から国内外のメーカーに引き合いを出し、打合せを始めました。また海外メーカーの設備を視察するため、アメリカやヨーロッパへの出張もありました。各社のあらゆる項目について比較検討して、最終的にはある海外メーカーの設備を採用しました。

Q2設備を発注するメーカー選びの際、何が決め手となったのですか。

花澤第一印象としてコンパクトでシンプルなマシーンだと感じました。この点に惹かれました。またこの海外メーカーは納入実績も豊富で視察先の工場でも順調に稼動しているようでした。

仁科キャパシティや冷却能力が魅力でした。停止していたDC電気炉はAC電気炉よりも一度に沢山の溶鋼をつくることができるのですが、このメーカーの設備はその生産量に十分対応する能力をもっていました。また、この設備は従来のものの2倍程度の冷却能力を有していました。この能力がブルームビレットの出来を左右します。今後、当社が生産性をあげていくうえで必要であると感じました。

花澤また納期も大事な要素でした。今回のプロジェクトには70億円程度を投じています。このような高額な投資ができた背景には政府による省エネルギー投資促進を支援する補助金や、地元の岡山県の補助金の存在があります。約17億円の補助金を頂くためには2018年1月末までには必ず設備を稼動させ、期待している省エネルギー効果を実現している必要がありました。

仁科納期やスペック、導入実績等を総合的に勘案し、本社の購買部門で価格条件等の最終交渉を経て、この海外メーカー設備の採用に至りました。

Q3海外メーカーの設備を導入するにあたって苦労はありましたか。

仁科国内メーカーと海外メーカーとではあらゆる点で違いがあります。国内メーカーの設備は日本の規格で作られており、部品など簡単に手に入れることができます。また国内メーカーであれば何かあればすぐに問い合わせることができます。しかし、海外となると言語の壁もありますし、時差もあります。国内の会社同士であればスムーズに進むことが、海外とのやりとりとなると、想像以上に大変です。

花澤これは国内でも同じことかも知れませんが営業担当と現場の人間とで言っている内容に食い違いがあることがありました。このためにスケジュールが遅れてしまっては補助金を受け取ることができません。スムーズに設備を導入を完了し、生産を開始するために出荷される前に現地工場での立会い検査や打合せを入念に行いました。中国、タイ、イタリアと飛び回ることになりましたが、なんとかスケジュール通りに稼動させることができました。

仁科大規模な工事でしたので関係者の調整も大変な仕事でした。AC工場での操業も考慮しつつ調整を行わなければなりません。こういった仕事には若手も関わってもらいましたし、メーカー打合せにもどんどん参加してもらいました。工場全体を俯瞰する必要があり大変ながらもやりがいのある仕事だったのではないでしょうか。

Q4今後の展望について教えてください。

仁科今回の新設備導入に伴って、今まで休止していたDC電気炉を再稼動させています。このDC電気炉を再稼動させたことによって薄板をつくるためのスラブの製造の見通しが立ちました。薄板分野への更なる進出は当社が掲げる「TOKYO STEEL ECO VISION 2050」を達成するためには不可欠です。この設備投資が薄板のマーケット開拓につながることを期待しています。

花澤新たな連続鋳造設備を導入したことで、DC電気炉にH形鋼・異形棒鋼向けの半製品を製造するブルームビレット連続鋳造設備と薄板向けの半製品を製造するスラブ連続鋳造設備の二つが繋がることになりました。スラブ連続鋳造設備が再稼働した暁には、以前のように多様な製品を一つの電気炉から製造できるようになり、市場の変化にフレキシブルに対応できるようになります。どのような需要にも応えられる体制を整えておくことで工場の安定的な稼動につなげていければと考えています。

仁科導入する設備を検討する会議で言ったことなのですが、今回の新設備は車でいうとフェラーリのようなものです。

花澤と、言うと?

仁科この設備を導入する理由のひとつに電気炉の供給能力をカバーできるキャパシティを備えていることをあげました。しかし、実際のところは「カバーできる」どころか「カバーして有り余って」います。非常に高い冷却性能もまだ活かしきれていない部分があるはずです。私はこのスペックをもつマシーンをスーパーカーのイメージと重ねずにはいられません。誰もがあこがれるスーパーカーのようなこの設備。私はこれを乗りこなしたくてわくわくしています。

Q5求める人物像について教えてください。

花澤考えていることを形にすることができる能力をもっている方、求められる結果から逆算して行動することができる能力をもっている方です。難しいことや立派なことを考えることは素晴らしいです。しかしそれは形にしなければ、実行に移すことができなければ、意味がありません。臆せず行動することでアイデアを具現化してほしいです。また、社会は納期や時間といったものに非常にシビアです。行き当たりばったりで行動するのではなく、結果を見据えた計画的な行動が大切になります。加えて、欲を言えば体力のある方がいると嬉しいです。広い工場を歩き回ると疲れます(笑)。もちろん体育会系でないといけないということは全くありません。

仁科とにかく多様性が大事であると考えています。もちろん専門性をもっていることは大切なことです。しかしイノベーションは狭い見識からは生まれません。多様な叡智が結集して生まれるものです。勤勉で様々な分野に興味を持ち、多様性を大切にする方と一緒に仕事がしたいと思います。そういった方が当社を良い方向に変化させていくと考えています。