東京製鐵を知るCOMPANY

プロジェクトストーリーPROJECT STORY

※所属および記載内容はインタビュー当時のものです

PROJECT STORY 01Car to car プロジェクト 自動車由来の鉄スクラップを原料として
自動車用鋼材へと戻す水平リサイクル

自動車由来の鉄スクラップの発生量は多く、貴重な鉄資源ですが、残念ながら国内ではこの活用が十分に進んでいません。東京製鐵は、自動車由来の鉄スクラップを原料として自動車用鋼材へと戻す水平リサイクルをすすめる「Car to Carプロジェクト」に取り組んでいます。このプロジェクトについてプロジェクトリーダーの中西と、サブリーダーの伊藤より紹介します。

Q1Car to Carプロジェクトの始まった経緯を教えて下さい

中西2012年からカーメーカーとCar to Carリサイクルの社会的意義や経済的価値、資源循環における価値等について議論を進める中で、その価値の重要性について共通の認識に至り、プロジェクトを開始することになりました。

伊藤プロジェクトの価値としては、スクラップが含む合金元素を有効活用することで廃棄物を自動車向けの高級鋼板にすることや、当社が廃自動車をそのままプレスした「全部利用Aプレス」を原料することでASR(シュレッダーダスト)の埋め立てが減ること等があります。また、高品位鉄鉱石や原料炭といった地下資源が枯渇していくという地球規模の課題がある中で、今後も発生が増える鉄スクラップを地下資源の代替として活用し、しかも品位を落として利用するカスケードリサイクルではなく、より品位の高い製品を作るアップグレードリサイクルは、真の資源循環を実現するという点で大変重要な意義を持っています。

中西1990年代は素材メーカーと最終製品のメーカーは完全に住み分けがされており、今では当たり前になっているような企業間の協力関係は珍しかったように思います。

伊藤そうですね。その状況も近年は変わってきています。特に2000年代からの状況の変化は著しいです。ITの進歩に伴って情報の共有が容易になり経済がグローバル化し企業間競争が激化しました。結果として一企業の戦いでは限界がみえるようになりました。

中西はい。そのように複数の当事者が共通のゴールを目指すことができるようになり、技術の進歩はますます速度を増しており、当社のプロジェクトは時代の流れを先取りした取り組みと言えます。2012年にプロジェクトがスタートしてから、鋼種や適用部位の選定など具体的な議論を進めてきています。

Q2Car to Carプロジェクトの進展について教えて下さい。

中西Car to Carリサイクルというテーマで環境省の調査事業を3年間行いました。1年目はスクラップを使用して自動車向けハイテンの製造にチャレンジし、技術的に可能なことを実証しました。2年目はハイテンのみでなく、板厚の薄い材料を製造可能なこと、しかも成分の安定しない老廃スクラップを80%使用しても可能なことを実証しました。3年目はそれまでに実証された鋼板が、実際に自動車向けの加工性を満たせるかどうかを外部の企業の協力下で確認し、高炉に引けを取らない板製品を作れることを示すことができました。

伊藤鉄スクラップ、なかでも老廃スクラップを主原料として鋼板を製造することは技術的に大きなチャレンジです。世界には鋼板製造にスクラップを使用している会社はありますが、Cu(銅)などのトランプエレメントや成分のバラつきの問題があり、新断屑や高炉が製造する銑鉄やDRI等のピュアな成分が安定した原料をメインで使用します。老廃スクラップにふくまれる不純物の悪影響克服し、且つ、含有合金元素のメリットを積極的に活用して自動車鋼板を製造するというチャレンジをしているのは当社だけです。それ相応の苦労はありますが、当社には地球環境の保全という大義がありますので非常にやりがいのある仕事です。

Q3このプロジェクトにはどのような人物に参画してもらいたいですか?

伊藤当社としては新領域への挑戦ということもあり壁にぶつかることも多くあります。こういった状況でもくじけることなくチャレンジできる人物ですね。困難に晴れ晴れと立ち向かってほしい。

中西私は多様性も大事だと考えています。あらゆる情報に簡単にアクセスできる時代において自らの経験のみに依存することはもったいないことです。様々な考え方や思想に触れれば刺激を受けますし新たな発見もあります。ですので、多様性を大事にし受け入れられる方が向いていると思います。

伊藤私もこのプロジェクトを通じて、国内外のユーザー、研究機関といった多様な方々と協業することで大きなシナジーが生まれていると感じています。

応募するENTRY withTokyoSteel